マンション管理基礎知識
WISDOM

7.マンションのメンテナンス(法定点検・各種点検等)

マンションの建物・設備の点検は、居住者が安全で快適に暮らしていくために欠かせないものです。マンションの点検には、法律で実施が義務づけられている「法定点検」と自主的に行う「任意点検」とがあります。
ここでは、法律で定められている「法定点検」について説明します。

マンションに義務づけられた「法定点検」

「法定点検」はマンションの建物・設備に対して法律で実施を義務づけられています。
この法定点検は、点検する対象箇所によって関係する法律が違います。
建築基準法で定められたものとして、

  • マンションの敷地・建築および構造の調査
  • 換気、非常照明、給排水などの設備検査
  • 昇降機(エレベーター)定期検査

などがあります。

消防法では、

  • 消防設備の点検

水道法では、

  • 水質検査
  • 水槽の清掃

などを実施することが定められています。
電気設備については原則として電力会社が維持管理の責任を負いますが、高圧受電設備が設置されているマンションでは、管理組合の責任で点検を行うことが電気事業法で定められています。

法定点検は有資格者が行う必要があります

法定点検はそれぞれ実施する時期(周期)が定められています。
エレベーターや消防設備、給水設備などの法定点検を行えるのは資格を持った専門家(有資格者)だけです。
有資格者による定期的な点検が義務づけられているものは、専門の業者に依頼して実施します。また、検査結果は地方自治体や消防署などの機関に、一般的には「理事長名」で、所定の方法で報告するように定められています。
こうしたことから、法定点検はマンション管理会社に任せるのが一般的です。

それぞれの専門業者に管理組合から法定点検を依頼するのは手間がかかりますが、直接依頼することも可能です。 以下に、各種法定点検に関する点検資格者の一覧を挙げておきます。

名称 点検資格者
①特定建築物定期調査 特定建築物調査員、1・2級建築士
②建築設備定期検査 建築設備検査資格者、1・2級建築士
③防火設備定期検査 防火設備検査員
④昇降機定期検査 昇降機検査資格者、1・2級建築士
⑤消防用設備等点検 消防設備士、消防設備点検資格者
⑥防火対象物点検 防火対象物点検資格者
⑦簡易専用水道検査 地方公共団体又は厚生労働大臣の登録を受けた者
⑧貯水槽清掃 貯水槽清掃作業監督者、貯水槽清掃作業従事者研修受講者
⑨自家用電気工作物定期点検 電気主任技術者(電気保安協会などに委託)

法定点検の種類を理解しましょう

主な法定点検には9つの種類があります。以下が点検すべき周期と内容です。
お住まいのマンションでもきちんと点検がされているか確認してみてください。

名称(関連法) 周期 内容
特定建築物定期調査(建築基準法) 3年に1回(都道府県による) マンションの敷地に地盤沈下や排水不良などがないか、基礎や外壁など建物の構造強度に問題はないかなど、その建物の全体的な調査を行う。
建築設備定期検査(建築基準法) 1年に1回(規模・用途による) 換気設備、排煙設備、非常用照明装置(地域によって貯水設備、排水設備)といった設備について検査を行う。
防火設備定期検査 1年に1回(規模・用途による) 防火扉・防火シャッターなどの防火設備について検査を行う。
エレベーター(昇降機)定期検査(建築基準法) 1年に1回以上 エレベーターの機能全般を点検する。なお、エスカレーターも含む。
消防用設備点検(消防法) 機器点検は半年に1回、総合点検は1年に1回 消火器や消火栓、火災報知器、避難設備、誘導灯、連結送水管などの設備の点検を行う。「機器点検」は、消防用設備の配置や状態の外観点検や動作確認を行い、「総合点検」は上記に加え、電源や配線など、より詳細な点検を行う。
防火対象物点検 1年に1回(規模・用途による) 建物の防火管理が正常・円滑に行われているか、防火基準を満たしているかなど、主にソフト面の点検を行う。
簡易専用水道検査(水道法) 1年以内ごとに1回 水質検査と貯水槽の清掃(貯水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超える場合)が必要。
貯水槽清掃 1年以内ごとに1回 貯水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超える場合必要。(10立方メートル以下の場合でも地方自治体により、上記に準ずる指導がされています。)
自家用電気工作物定期点検 高圧受電設備(600Vを超える)の月次点検と年次点検 電気設備は原則電力会社の責任で維持管理を行うが、高圧受電設備が設置されているマンションにおいては、管理組合の責任で点検を行うことが電気事業法で定められている。

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